2014/08/14

ある種の呑気さ

 世事万端、当時まだゆったりとした人間の気風がのこっていて、それを封建的というなら、今日、主権在民とはいうものの、なにやら世知辛い首都東京のささくれ立った環境とは、別のものがあった。(桑原甲子雄)

 最近、図書館から桑原甲子雄の写真集を何冊か借りてきて眺めていた。満州紀行以外は、東京を写したもの。身近なものしか写さない人なんだ。『夢の町』という本には、昭和9年から19年までの写真(モノクロ)が入っていて、真ん中付近になぜか、この写真集の編まれた1970年代のカラー写真がちょっと挟み込まれている。ぼくが見ているのは、太平洋戦争に突入していく前夜の、東京の町の、人びとの、明るさだ。そしてぼくがなぜいまこの人の写真にすごく惹かれているかというと、ただ撮っている、といった感じの、ある種の呑気さと、町や人や時代にたいするまっすぐ(素直? 中立的?)な姿勢があるからだ。今夜は、写真ではなく、エッセイ「庶民の頭越しに戦争の足音が…」という短い文章を読んでいる。

0 件のコメント:

コメントを投稿